s君は、2歳であてんぽにやってきた。今は3年生。
当時、チビちゃんは久しぶりだったのと、2歳というのが初めてで、「できますよ」とは言ったものの、ぴあねっとの先輩講師に教材やらグッズを譲っていただき、毎回綿密な指導案を立て頑張った。リズム感と理解力があるs君は、甘ったれなところもあったが、発表会で「はじめのことば」を立派に務めたり、順調に伸びていった。
小学校に入り、バス通学や習い事も増えピアノも大変になり、発表会前はハラハラ・・・の年もあった。
今年の発表会は連弾もソロも頑張り、女の子から沢山
を貰い、ご機嫌だった。「さぁ、今回、苦労したから、全てを暗記するのではなく読譜をきちんとしようね」
と、取り組み方を変えようとしていたところ、お母様の身体の具合が悪いのと、習い事を少し整理するとのことで、しばらくお休みしますということで、今は来ていない。
お休みの生徒さんには、「あてんぽめーる」をお手紙を添えて送っている。
それが届いたのでs君のお母様から
を頂いた。毎月のお手紙のお礼と、s君がそれを宝物のようにしていることなどを教えてくださった。
そして、本当はお休みするとしかあの時は言えなかったのだけれど、上手になるためには、「中村先生は大好きだけれど、きっと甘えてしまうから」とお母様と話し合って、別の教室に行ってみようかということになったこと。s君は「両方行きたい」といったけれど、それは不可能なので、「上手になったら、又、中村先生の所に戻ろう」と約束をして、上手になれなかったら戻れないんだよと言い聞かせ、遠いけれど送迎はできないからと言ってあるので、一人で
で通っているとのこと。
「電話やメールじゃなく、ちゃんとお会いしてお話しに行こうと思ってたんです。でも、今日も教室に行っちゃって曜日間違えたりしてすみません」と言いながら、s君の様子を話してくれた。
私は長年やっているので、生徒さんが退会するときのお互いに、何ともいえない気持ちは幾度となく味わっている。
でも、それは長い一生のうちの通過点であって、私の中でも、想い出は沢山あるし、生徒さんも、大人になってピアノを習っていた時の事を思い出すこともあるだろう。その時に「いやだったなあ・・」というのは避けたいので、今も全力投球だ。
昨日の
は「本当の事」を私に伝えたかったというのはわかる。
黙って違う教室に通い続けたって、私は責めたりしないし、そういう方も今までもいただろう。
大人になると、「本当の事」を馬鹿正直に伝えるのが正しいとは限らない。
・・・というような行動を私自身もとりがちだ。しかし、昨日は「敢えて、本当の事」だ。
「上手になって戻ってきたときに先生、あたたかく迎えてくださいますよね?」
との言葉に「勿論ですよ。しっかり自分の頭で考えて気持ちを伝える事ができる、s君を褒めてあげてくださいね」といいながら、色々な想いが頭の中を駆け巡った。
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